クアラルンプールのバリアフリー度(4)

それでは歩道の状態やメンテナンスがどうなっているかというと、もちろん有名な観光スポット沿いや人の往来の多いところはきれいに整備され、比較的メンテナンスも行き届いています。


きれいに整備してある歩道
 

だけど、大通りから少し離れたり古くなったりしたところは、どうしてもメンテが行き届かなかったり歩行者への配慮が不十分になりがちです。


メンテがなかなか行き届かない。また、歩行者への配慮が不十分なことも多い。
 

 

ぼんやり歩いていると危ないことも 
(写真はクアラルンプールではありません)

こうなると通行人がますます減り、それにつれてモラルも低下してくるんじゃないかと思います。


歩道が駐車場に

一度クアラルンプール市役所の人と話す機会があったので「もっと歩道の整備をした方がいいんじゃないですか」と聞いてみたことがありますが、「それは分かっているけれどマレーシアは日本と違って暑いし簡単ではない」と言っていました。思わず「日本の夏の方がずっと暑いですけどね」と言ってしまいましたが、まあここは一年中暑いですから気持ちもわからないでもありません。

それにマレーシア人の友人にも聞いてみましたが、マレーシアではモータリゼーションの波が続いていて、自分の車を持つことがステータスシンボルになっているので、汗だくになって歩くような人は変な目で見られるとのことでした。確かに都市部ではなにごとも文字通りクールにスマートにこなそうという雰囲気があります。

しかし、そういう人たちが乗っているたくさんの車が毎日大渋滞を起こして結局車の中でイライラしてるという皮肉な状況も起きています。きっとその中には車の通勤がいやで、できれば運転したくないと思っている人もいると思うので、まずはそういう人に車の使用を控えてもらえるように、もっと公共交通を充実させてはどうかと素朴に思います。


通勤時間帯の渋滞は慢性化している

MRTは昨年7月に開通した1号線の他に、いま工事が進められている2号線、さらにKL中心部を取り囲む環状の3号線の計画があります。3号線は財政負担の懸念から実現が危うくなっていますが、ぜひこういう公共交通機関を最大限に活かして通勤の車を減らし、KLの渋滞が緩和されればと思います。

そのためには、自宅から最寄り駅までと、降りた駅から職場などの目的地までスムーズに行けるように歩道の整備やバス路線の充実がとても重要でしょう。さらにそれは車椅子を使う人や高齢者、小さな子供がいる家族連れなどにとっても、いまよりずっと行動範囲が広がることに繋がるんじゃないかと思います。ついでに私のような外国人や初めてKLに来たツーリストなども、気楽に街を散歩できるようになればなおいいと思います。

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クアラルンプールのバリアフリー度(3)

クアラルンプールの中心部を離れると、大きな道路は自動車専用道みたいになっていることも多く、そういう道では交差点は立体交差になっていて信号もほとんどありません。こういう道を横切らねばならない時はやっかいで、交通量が少ない時間帯ならまだいいですが、車が途切れない時や夜間はヒヤヒヤしなければなりません。


 右奥のビル群の中に巨大なショッピングモールがある。真ん中の道路はそこに繋がっているけど、歩ける道ではない。
KLの郊外ではこういう高架道路・立体交差が多い。
一度右のほうから迂回して歩いて行ったことがあるけど(ふつうはそんなこと誰もしないよ!)、生活感あふれるアパート裏の駐車場の真ん中を通るような道しかなかった。

しかし、昔からの市街地では道路は平面で交差するので、交差点がたくさんあります。


SOGO近くの交差点

上の写真の交差点はかなり立派。このあたりはわりと集中的に整備されているんですが、それでも歩いていると信号が消えていたりすることも。


ここでは信号が消えていた
(それとも、交通量が少ない時間帯にはわざと消してあるのか?)


歩行者用のボタン
押しても作動しているのかどうかわからないことが多い

どの場所でもこのぐらいよく整備されているといいのですが、なかなかそうはいかず、結局は車の往来を見ながら隙を見て車道を渡ることが多くなります。

住民もそれに慣れっこになっているし、ドライバーも人が横断する可能性はある程度念頭においているみたいなので、とっても危険というわけではないかもしれませんけどね。


ここは奇妙。向こう側には横断歩道があるのに、手前にはない。
右下の縁石は低くして横断歩道を作るつもりだったのに途中で止めた?


こうやって車の往来の隙を見計らって道路を横切る姿はごく普通に見られる

KLの街中のバリアフリー度を考える時には、まず、段差があるとかスロープが無いとかいう以前に、上に書いたとおりそもそも普通に歩いて行けるように作ってあるの?という点が重要です。

市中心部の道路であれば大体歩道は設置されているものの、そこを歩いている人の数は繁華街以外ではとても少なく、どうも「道というのはこんなもんだろう」と住民もあきらめて、歩くことに必要以上に消極的になっているんじゃないかと思えてきます。

しかし、道路を作る側の当局にも問題意識がないわけではなく、一部の地区では下の写真のような高架歩道を作ったりしています。


高架歩道


KLの歩道橋は全て屋根が付いている。
雨・陽よけ対策だと思うけれど、豪雨の際の排水が車道や下の歩道の一点に集中して落ちないようにとの安全対策かも?とも思った。


高架歩道から見たJalan Sultan Ismail
向こうのアーチ型の歩道橋は20数年前にもあった。
ただの歩道橋なのにこういう洒落っ気を出すところは好き。

これと同様の高架歩道は、KLCCとブキビンタンの両繁華街を結ぶルートにも作られています。これは上の写真の高架歩道よりもっとゴージャスで、歩道を窓で囲って冷房が入れられています。

KLCCからブキビンタンのパビリオンという大きなショッピングモールまで約20分、よく歩きましたがこの高架歩道はとても快適で便利です。でも新幹線でいうと「のぞみ」か「ひかり」みたいに停車駅が少ない(降りられる場所が限られている)ので、行き先によっては地上に降りてからまた苦労して歩かねばならないこともあります。

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クアラルンプールのバリアフリー度(2)

KLに来た時、最初の6ヶ月ぐらいは車がなかったのでよく歩き回ってました。電車が使えるので、電車で行って行き先で歩き回るという感じです。

本当は市内の路線バスも活用すればいいんですが、バスはどうも苦手でした。というか、使えなかったんですね。

どこをどう探しても全体のバス路線図が見つからない。路線単体の図は見つかっても、地図上に書かれてないのでいったいどこを走るのか、マイナーな地名を示されても全くわからないし、時刻表もありませんでした。

ある時、多分この辺りに行くだろうと見当をつけ、意を決して路線バスに乗ったことがありますが、でもやはり想定外の方向に行ってしまう。仕方がないから傷が浅いうちに引き返そうと適当な停留所で降りて、反対方向のバスに乗って戻ろうと思ったら、そもそも反対向きの停留所が見つからずに立ち往生。どうやらバス路線がループを描いていて一方向に回るしかない、なんてこともありました。


バスそのものは、電車と共通のICカードが使えて便利だし、
乗っているだけならわりと快適です

というわけで、車がない時期はひたすら歩きました。しかし、この歩くというのがとても大変です。

歩く話の前にKLの交通事情をもう少し書いておきます。

もちろん場所にもよりますが、マレーシアの都市の多くの場所では車優先の設計がされています。車で行くならとても快適(ただし、渋滞がなければという条件付き)、車が無い人はタクシーを使うかバスを使うことになります。


街の中心部の道路の様子
これは歩道橋からの写真。歩道橋がもっとたくさんあればいいんだけれど。

タクシーはGrab(最初はMy Texsiと言っていた)というスマホの配車アプリができてから随分便利になり、私が経験した限りでは10〜15分ぐらいの間に来てくれるし、料金トラブルなどもありません。でも流しのタクシーだと料金交渉やなんやらで嫌な思いをすることが今もあります。いずれにせよそれなりの料金を取られるのがタクシーです。

バスは料金は安いものの、上に述べたとおりマレーシア人でも初めての場所ではとても使えないだろうし、使えたとしても運行時刻もわからないので時間によほどの余裕がある時限定でしょう。使うのは本当に地元の乗り慣れた人に限られるのではないでしょうか。

私が見る限りKLの人が採る選択肢はここまでです。目的地まで歩いて行こうというのはせいぜい500mぐらいまでだと思います。時間にすれば10分も歩けば長い方でしょう。それ以上になれば、時間がかかっても車で行くかタクシーを拾うんじゃないかと思います。

まあ、暑いので仕方がないのかもしれません。夜であれば安全の問題もあるでしょうし。

で、何が言いたいかと言うと、街が歩くことを重視した作りになっていないので、歩きにくいんです。というか気楽に歩けないんです。無理をすると命がけになります。

KLセントラル駅は、国際空港(KLIA)から直通列車一本で来れるまさにマレーシアの玄関口で、ヒルトンやメリディアンなど有名なホテルもあります。そこから道路を挟んで直線距離にしてわずか300mほどの場所に国立博物館(ミュージアムネガラ)が、またその背後には広大な敷地を持つレイクガーデンという気持ちのいい公園が広がっています。

最初に行った時、KLセントラル駅から絶好のロケーションにあるこの博物館に行こうと考えました。この距離なので当然歩いて行く道を探したのですが、結局私には見つけられませんでした。え?そこに見えているのに。300mでしょ。なんで歩いて行けないの?と言う感じ。

正確に言うと道はあったようです。私の友人は歩いて行ったと言っていました。私も2年後に博物館側からその通路を発見しました。でも正直言ってとても国立博物館というメジャーな施設に行く道には見えないし、人も通っておらず、ここを通って観光客が博物館に行くことは想定していない雰囲気。。。あとで知りましたがセントラル駅から博物館にも停まる無料バス(Go KL)が出ていたようで、きっとこれに任せていたんでしょうね。

ちなみに、私が最初に博物館に行こうとした時には、下の写真の道路を突っ切る方法しか見つかりませんでした。もちろん行きませんでしたが。


博物館はこの右手。さらに別の道路を横切る必要があるはず。
さすがにここを突っ切るのはやめました。
車はものすごいスピードだし、行ってもたどり着ける保証もないし。

なお、今はこの状況は解消されました。昨年新しくできたMRTの駅が博物館の横にでき、その駅とKLセントラル駅が地下で繋がり冷房の効いた中を快適に行き来できるようになっています。

こんな風に、マレーシアの人から見るとそもそも暑い中なんで歩いて行かなきゃならないの?という感覚で街が作られているみたいです。なので、KLの道路は上の写真のように車がスムーズに走ることを中心に考えて作られていて、歩行者が歩道を歩いたり道路を横断することに十分配慮した作りにはなっていません。

横断歩道はたまにはあるし、歩行者用の信号も設置されていたりしますが、その信号が消えていたり、稼働していても青信号で道を渡るのに十分な時間が確保されていなくて、途中で走らねばならなかったり。。。ということもしばしばです。

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