DeepL小説、Grammarly小説の未来(番外)ー こんなのあったらいいなあ

DeepLで翻訳している間に考えた、こんなのあったらいいなあという機能を書いておきます。

1.用語集

日本語にもぜひほしい。技術的な問題があるのか、それとも日本語版が後発だから無いだけなのかわからないが、ぜひこの機能を装備してほしい。

2022.5.7追記:今日DeepLを見たら日本語←→英語の用語集の機能が搭載されていました!

シライン(亜東 林)

 

2.部分的読上げ機能、速度調節

前に書いたとおり、この読上げ機能が非常に役立った。しかし、操作の際はペーストした文章の冒頭からしか読み上げてくれず、途中の文章を何度か聞き直す場合には、いちいちもう一度冒頭に戻るか、前の文章を削除しなければならなかった。

例えば、カーソルの位置から読上げ開始してくれるとか、選択範囲だけ読み上げてくれるとかの機能があると大変うれしい。

速度調節も可能ならありがたいのだが。

LIARS IN SPACE (Rin Ato)

 

3.英語から日本語へ翻訳するときの主語

日本語の文章に主語が欠けがちなのはよくわかる。DeepLで英文を日本文に翻訳したときにも、日本語らしく主語を抜いた文章が出てくるのだが、少々抜けすぎて違和感のある文章になっている時がある。

特に、「彼ら」という言葉が過剰に省略されているような印象を受けた。おそらく、英文上でtheyが実際に特定の人々を表す場合と、ごく一般の人々を示す場合があるようなところが理由ではないかと思う。

特定の人々を指して、彼らと表現してほしい時に出てこないことがあるので、もう少し表面に出るようにならないものか。

手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

4.話者設定、キャラクター

DeepLのメインターゲットはおそらくビジネスユースだと思うので無理だとは思うが、できればいいなあと思ったのは、会話文の話者の指定だ。

用語集で単語の定義をするように、何人かの話者を事前に設定して、各々の性別や場合によっては年齢、もっと言えばキャラクターまで設定して、入力文で誰の発言かを指定してやるとそれに合わせた翻訳が出れば嬉しいと思った。

でもちょっと複雑すぎますね。それにディープラーニングによるAIには馴染まないかもしれませんね。

 

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アダムの選択(亜東 林)

 

手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

シライン(亜東 林):改訂版

 

LIARS IN SPACE (Rin Ato):シライン英訳版

英訳の経緯はこちら

DeepL小説、Grammarly小説の未来(8)ー メリットとデメリット、感想

たった一回やってみただけだが、小説をプロでもない自分が翻訳したというこの経験について、感じたことを書いておく。

1.メリット

元の小説を修正できる

誰がなんと言おうと、著者が自分で翻訳することには圧倒的なメリットが一つだけある。それは、どんどん元の小説を修正していけることだ。

やはり他言語に変換する過程で、元の日本文にたくさんのアラが見つかる。言語的な事の他にも、様々な場面をじっくり考える機会が与えられるので、「あれ?矛盾している」というようなことはしょっちゅうだった。

プロの校閲者の目を経ているわけでもなく、日本文だけを読んでる時には気づかなかったのだ。

プロの作家の作品をプロの翻訳家が訳す時はどうしているのだろう?校閲の段階で、そんな初歩的な問題は全て潰されているということなんだろうか?英語版を作るような場合は既に評価が確立された作品だし、その手の問題は起こらないということだろうか。

費用

大きなメリットはやはり費用かな。たしかに、DeepLとGrammarlyの有料契約をしたが、初年度はいずれも1万円前後だった。あれだけ使い倒せばこの料金は安い。

ちなみに、Grammarlyは毎週一回、前週の自分のパフォーマンスについてメールで報告してくる。最盛期には「あなたは先週Grammarlyユーザーの98%よりも生産的でした」という報告が何度もあった。

トータルで、この一年で約120万語をチェックしたそうだ。同じ文章を何度もチェックにかけているから、確かにそのぐらいにはなるだろう。

 

2.デメリット

やはり質の問題は大きい。前に書いたとおり、いくら翻訳ツールが優秀でも、結局最後に品質の制約になるのは自分だ。

私の場合はDeepLを辞書のように使ったと言えるかもしれない。普通の辞書ももちろん使ったが、普通の辞書が単語の辞書なら、DeepLは表現方法の辞書とでもいうべきものだった。

多数の表現方法から一つを選んで、それを組み合わせて文を作っていくのだ。その組み合わせ方は無限にあるから、そこで自分の能力が表に出てしまう。

もちろん、DeepLが最初に選んだ組み合わせが表現方法としてベストな場合も多くあっただろう。

しかし、元の日本文の不完全さや、主語の性別や単複の問題などから、結局ほとんどの文については手を加えることになった。元のDeepLの翻訳がそのまま残っているものはたぶん数%といったところだろう。

時間

もう一つのデメリットは時間だ。日本文を書いている時も国語辞書は頻繁に引くが、それでも書いたものの文法的なことやできあがった文意については、自分の判断でさっさとOKを出していく。

でも英文ではそうはいかなかった。特に終盤では神経質になって、ほんの少しの修正を施した時も、Grammarlyには一応かけることにしていた。そこで間違いが出ないのならそんなことはやめるのだが、やはり出てしまうのだ。

スペルミスを初め、苦手な単複の一貫性や冠詞の有無などのミスをGrammarlyが発見してくれることはよくある。

今回1年間かかったが、他の用事もやってたし、本の表紙づくりに熱中していた時期もあったので、翻訳に費やしたのは、平均すれば1日に3時間程度だったと思う。しかし、1日の作業量を増やすことは困難だ。5時間もやれば限界がくる。睡魔との闘いだ。

でも、次にもし同じことをやれば三分の二ぐらいの時間でできるだろう。スキルも上がったし、ツールの使い方にも慣れたからだ。

 

3.終わりに、感想

このブログを書くにあたって調べたら、一年前にこの翻訳に取り掛かった時は、DeepLで日本語を取り扱えるようになってからまだ一年経つか経たないかの時期だったことを知った。

ということはこんな大胆なことをやった人はまだあまりいないのかも知れない。もちろん、他の翻訳ツールもあるからやった人はいるだろうが、正直に言って私自身は、知る限りの他のツールでこれをやる気になったとは思えない。

翻訳の質のほかにも、使い勝手の面でもDeepLは優れていると思う。word文書で二百数十ページを数分で一括翻訳してくれたのにも驚いた。

まあ、これをやったことと小説が売れるかどうかという話は全く別問題だ。でも、webができ、電子書籍のマーケットプレイスができ、そしてこういった優秀な翻訳ツールができ、少なくとも個人の考えに世界中がアクセスできるようになったことは画期的だと思う。この流れが、ずっと加速しながら続いていって欲しい。この小説で描きたかったこともまさにそういうことだった。

翻訳には作業の側面があり、日本語で物語を書いているよりも創造性という観点では劣るものの、決して思うほど辛いものでもなかった。初めて翻訳文を見た時には、横文字になった自分の小説がとてもかっこよく見えたものだ。

脱線すると、日本文の方も英文と対照して見るために横書きに変換したのだが、どうも横書きにすると軽い感じがしてしまう。やはり日本語は縦書きだ。

この一年、根気の塊のようになってやってきたわけだが、コロナ禍のせいで家に篭らねばならないという、特殊な状況があったからやれたことかもしれない。これが経済的な実りを生むとも思えないが、かと言って決してこの努力が無駄だったとは思っていない。ついに出来上がったのだから。

これを作ることに一歩を踏み出させてくれた、AI翻訳ツールの開発者の皆さんに感謝します。と、謝辞にも書きました。

 

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アダムの選択(亜東 林)

 

手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

シライン(亜東 林):改訂版

 

LIARS IN SPACE (Rin Ato):シライン英訳版

英訳の経緯はこちら

DeepL小説、Grammarly小説の未来(7)ー AI翻訳で出会った現象 3/3

3.DeepLの不思議な振る舞い

つづき

最初はぞっとした

翻訳を始めた頃、あるいは、翻訳を始めるにあたって少なめの文章でテスト翻訳をしているころだったかな。たしか英語から日本語への翻訳文の文頭に「…」という、なんと呼ぶのか知らないが、躊躇いを表したり、文尾であればことばの余韻を残したりする表現が現れたのだ…

これは今でもたまに出くわす。もちろん、元の文にはそんなものはなく、普通に言い切っている文章だ。

しかし、これを初めて見た時には驚いた。その前後の文脈からまさにぴったりの表現だったからだ。ええっ!こんなことまでできるのか、と。

たまたまその時は真夜中の2時か3時頃だった。薄暗い部屋の中で眺めているディスプレイに、「どうだい?この訳は気に入ったかい?」とでも表示されたらどうしよう、とゾクゾクっとしたのをよく覚えている。

実は最近も興味深い現象に出くわした

どう書こうかと思ったが、本の宣伝も兼ねてその時のスクリーンショットを下に貼っておく。

この本をamazonに出してから10日ほどした頃、何かの役に立つかもしれないと思い、この本に関する英語の簡単なホームページを立ち上げた時のことだ。

著者の言葉として数行のメッセージを載せておこうと、DeepLに翻訳してもらった時の画面である。もちろんまだ一切修正はしていない、一番最初の翻訳文だ。

(クリックで拡大します)

よく見比べてほしい。右側の英文のAmazon.co.ukの部分だ。

左側の日本文にはそんなこと一言も書いていない。DeepLが、Amazon.co.ukで買うことができるという文を付け加えてくれているのだ。(敢えて好意に感謝する「くれて」をつけておく)

UK(イギリス)を選んだというのも驚きだ。実は私はこの本をUKのサイトから入って作ったのだ(ただし、結局は.com、つまりたぶんアメリカが管理するサイトに誘導される)。

さらに、このサイトでは本を売るメインターゲットの国はどこかと聞かれるので、UKだと登録してある。ひょっとすると、DeepLはネットでサーチしてそれを知ったのかと思ってしまう。各国サイトでの売値を比べれば、UKがメインであることはわかるかも知れない。

これがもし人に翻訳してもらっているのなら、間違いなく「ああ、親切にこんな文章を付け加えてくれたんだな」と思ってしまう。

もう少し驚きの理由を説明すると、この小説にはエイリアンとか宇宙船も出てくるのだが、実は話の骨格は人工知能のことなのだ。人工知能がもたらすリスクを描きながら、それを克服する方法があるはずだと問いかけ、AIを建設的に捉えようという内容なのだ。

考えてみればDeepLの人工知能はこの小説の数少ない(笑)読者の一人(一つ?)だから、自分達を肯定的に捉えている小説を売ってやろうという動機が働いても不思議ではない。

と言いながら、真実はたぶん、決まり文句のように何度も使われた英語のフレーズを引っぱって来たということだろうし、UKにしたのは小説がイギリス英語だからということに過ぎないだろう。

しかし、AIとこれだけ密着して作業をしていると、なにやら単なる機械ではない何かの存在を感じてしまうことがあるのも事実だ。

 

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