DeepL小説、Grammarly小説の未来(5)ー 翻訳はこう進めた 1/2

300ページ超の自らの小説を英訳したわけだが、全体はこんな感じで進めた。最初から予定した部分もあるが、結果としてこうなったというのが大半だ。

0.原則

場所によって翻訳の力の入れ方にムラが出てはいけないので、原則として小説の最初からスタートして、一定の精度で翻訳を進めながらそのまま最後までやり切る。これを1ラウンドとしてラウンドを重ねることにした。

結局、これを10ラウンドやることになった。

1.第1ラウンド

(1)精度

最初はとってもラフに1ラウンドやってしまおうと思った。どんな感じでやれるかをまず知りたかったからだ。

この方針はある面では良かった。第1ラウンドの三分の一ぐらいまでスピード重視でやったところで、全体にかかわる様々な問題が早期にわかったからだ。

これについては、別のページにも書いておきたいと思うが、例えば固有名詞の表記の統一や日本語、英語の根本的な表現方法の違いなどだ。

(2)翻訳ムラ

第1ラウンドの半分ぐらいまでくると表記統一の問題なども出尽くし、悩みながらも一貫した書き方の方針なども仮に固めた。また、DeepLとGrammarlyの使い方にも慣れてきて、結構力を入れて翻訳をするようになってしまった。

スピードも落ちラフに第1ラウンドを終わらせるという方針から外れ、良かったのか悪かったのか、やはり翻訳にムラが出てしまった。

どうも後半の方が出来がいいのだ。その印象は第1ラウンドを終え、その後数ラウンドを重ねたあとでも感じることになった。

やはり、一番最初の骨格を決めるときにしっかりやっておくのが大事なようだ。もう一つは日本語の問題かも知れない。物語の前の方よりも、後ろの方が日本語としての書き方が充実しているのかもしれない。

(3)翻訳手順

一番最初に全文をDeepLで一括翻訳した。試行錯誤だったのでやや記憶が薄れているが、第1ラウンドでは、この全体版を直接編集していくというよりも、全体を見るための羅針盤のように使ったと思う。

つまり、英文に訳されてしまったあとでは、前に書いたDeepLのプルダウン機能が使えないわけだ。

確かに最初は全体版の英文を全部自分の手で修正していったのだが、ロクなことにはならず、しばらくしてプルダウン機能の便利さを知ってからは、こちらに頼ることになった。

安定した頃のやり方は、数パラグラフずつ日本語版を切り取ってDeepLで翻訳。プルダウンを使って必要な修正を行うが、その際には全体版の英文とも見比べ、良い方の表現を導入。

その後Grammarlyで文法チェック・修正、再度DeepLで修正文の日本語訳の意味やニュアンスを確認、という繰り返しを何度か行い、出来上がったら全体版の該当部分に上書きペーストしていった。

これだけでもややこしいが、実際には第1ラウンドでは主語や固有名詞、人称代名詞の性別などを書き換えていかねばならず、複数のDeepLウィンドウを立ち上げて修正用にしたり、部分的な訳の検討を行ったりした。

ちなみに、右側の欄ではプルダウン機能を使わずに直接修正もできるのだが、続けているうちに良くないことが起こったりするので(なんとも説明し難い)、直接修正は徐々にやらなくなった。

つづく

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アダムの選択(亜東 林)

 

手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

シライン(亜東 林):改訂版

 

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英訳の経緯はこちら

 

DeepL小説、Grammarly小説の未来(4)ー 英文法チェックツールGrammarlyとは

サラリーマンをしている時にこの英文法チェックツールGrammarlyの存在を知っていればよかった。メールとか原稿とか、もっと色々できたのにと思う。

今知ったが、Grammarlyの会社はアメリカに本社を置くようだが、このツールはもともとウクライナ人が開発したようだ。サイトにはウクライナへの応援ページもあった(今ロシアが侵攻中)。

1.無料版と有料版

最初は2か月ぐらい無料版を使っていた。それで十分だろうと思っていたのだ。その後有料版にしたのだが、今思えば最初から有料版にしとけばよかった。そうすれば、もう少し早く翻訳を終えることができただろう。

無料と有料の違いは、基本的にチェック内容がより豊富になるということのようだ。Grammarlyのウェブ版では英文テキストを貼り付けると、文章の要修正・要確認の箇所にその重要度に応じて色を変えた下線が引かれる。

それとともにその理由も表示されるのだが(英語で)、無料版ではその理由が一部について不開示になっていた。

特に、一つの文に丸ごと下線が引かれるケースでその理由が不明のことがあり、下線が消えるまで文章を変えてみたりするのだが、これで時間がかかってしまったのだ。最初から有料にしとけば、何が問題なのかはっきりするので対処も簡単だったはずだ。

セキュリティーの面ではGrammarlyは入力した文書が保存されてしまうが、その文書を削除するということもユーザーはできる。少なくともログインして入った画面からは消えてしまう。

また、Grammarlyはwordやブラウザーなど、他のアプリケーションに導入して機能拡張できるらしい。アドインというやつだ。これをやると、そのアプリで文章を書く時に自動的に文法チェックをしてくれるそうだ。私は主な用途がこの小説の翻訳だったので、ウェブ版のみで十分だった。

無料版がどんな感じだったか思い出すために、ログアウトして見てみようとしたが、うまくいかなかった。DeepLと違い、こちらは無料版を使用する際にもユーザー登録が必要だったからだ。

2.チェック内容

私はウェブ版しか使っていないので、それについてのみ書きます。

まず、使用法は簡単。ウェブ版の編集画面にペーストで英文を貼り付けるだけ(ファイルをアップロードする方法もあるが、やったことはない)。基本的にはDeepLで作った英文を貼り付けたが、その英文にもけっこう指摘の下線が出てくる。

有料版の指摘の種類は、思い出したり、いま何度か試して出て来たものを下に書いてみたが、全部ではないと思うし分類とその意味は正しくないかもしれない。あくまでもご参考まで。ちなみに下線の色も有料版のもの。無料版は少し違います。

赤:間違い

綴り/無駄なスペース、ピリオド・コンマが無いなど基本的なパーツの間違い/時制/単複の不一致/品詞/冠詞/単語の選択誤り/文章になってない(動詞がないなど)/知らない単語です/ハイフンの欠如/従属節が主語を修飾していない(?、文法知識の欠如で指摘の意味がよくわからなかった)/用語の統一がされてませんよ(the Captainとthe captainが混じってるなど)/これはイギリス英語の綴りじゃないでしょ

青:強い改善提案

簡素化のためにここを削除してはどうか?/読みにくいから文をこんな風に書き換えてはどうか?/受動態の濫用です/受動態の行為者がわからん/意味のない単語多すぎ/こう書けば語数減るでしょ/こんな言葉は不要/同じ意味の言葉が重なっとる/この代名詞は誰のことだかわからん/箇条書きにしたら?

緑:優しい改善提案

濫用される単語だからこっちも考えてみたら?/この単語繰り返し出過ぎ/単調な文の繰り返しになってるわよ/この形容詞はこの名詞とは相性悪いからこっちに変えたら?

紫:ちょっと気にしてね

この単語は文の調子が弱まるから削除したら?/前置詞が文末に来てますよ(嫌う人がいるらしい)/この単語は時代遅れでポリコレ的にまずいんじゃない?

こんなところかなあ。下に行くほど女性言葉になるのは、きっと下線が表示されたときに受ける心理状態が表現されてるんだろうなあ。

ただし、こんな風にたくさん指摘をされるが、それを受け入れるかどうかはもちろんユーザーの判断。

受け入れるなら改善案のボタンを押せば自動的に修正してくれるし(ただし、改善案の提示が無い場合もある)、無視するならその指摘項目のゴミ箱マークを押せば、同じページであれば以後二度と指摘しなくなる。(この状態をリセットしたいときは、新しいページを開く必要がある)

初期のころに参ってしまったのが受動態の濫用(という指摘の濫用、と言いたくなるぐらい多い)。そんなに嫌うなよと思うのだが、以前行っていたカルチャースクールの英語の先生が、日本人はなぜこんなに受動態を使うんだ?と確かに言っていた。

きっと元の日本文が受動態だらけで、DeepLもそれを受けて受動態で翻訳するのだ。最初はこの指摘を受けるとできる限り能動態に書き換えていたが、ある程度進んだ段階でほぼあきらめた。まあいいじゃないかと。受動態にはそうする理由があることもあるし。

もう一つ。これは今も悩ませられるのだが、不必要なコンマがあるという指摘。an unnecessary comma という言葉を何度見たことか。文章を切って意味を掴みやすくしたいので、DeepLが打ってきたコンマをそのまま残したいのだが、これが気に入らないらしい。

しかし、翻訳文作成の経験を積むにつれ、なんとなくコンマを残す方法もいくつかわかってきた。なので最初は我が道を往くとけっこう無視していたのだが、最後の方ではGrammarlyの指摘を受けたら、指摘が消えるまで文を修正するようになった。

3.設定

最初にこれを書くべきだったかもしれない。チェックする英語の種類を選ぶことができる。米、英、加、豪と選べるようだ。私はマレーシアに縁があることから、イギリス英語でやった。

それから言語セッティングのページにfluency assistanceというスイッチがあったが、これはよく知らなかった。調べるとどうやら特定の数か国の人については、その国の人独特の英語で起こしやすいミスを指摘してくれる機能のようだ。しかし、その数か国に日本は入っていなかった。

もう一つ、Grammarlyの新しいページを開いてテキストをペーストする最初の時に、Set goalsという設定画面が現れる。想定する読者やフォーマルさ、文書の用途や意図などを設定するようになっている。私はずっと同じ設定でやったので、これを変えた時にどのぐらいの差異が出てくるのかはわからなかった。

4.その他

ちなみに、Grammarlyの画面や解説は全て英語なのでそれらを読む必要は出てくるが、いくつかのパターンを見てしまえば、あとは読まなくてもほぼわかるようになる。

また、しばらく無料版を使っていると有料版のディスカウントのメールが来るようになった。私も結局そうなったが、しばらく無料で使ってみて、気に入ればディスカウントをねらって契約するというのもアリだろう。

 

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DeepL小説、Grammarly小説の未来(3)ー 翻訳ツールDeepLとは

ドイツ発のDeepLで日本語の翻訳ができるようになってから、まだ2年ほどみたいだ。Google翻訳を初めて使った時にも驚いたが、DeepLはもっと驚いた。ここまでやれるようになったのかと。DeepLは無料版もあるので、誰でも試してみればその翻訳精度を確かめることができる。

1.無料版と有料版

私は最初もちろん無料版を使っていた。しかし、この小説の翻訳を始める時には有料版を契約した。無料版と有料版では翻訳できるテキストの量などに差があるほかにも、セキュリティー上の差異がある。

無料版の利用規約では、入力したテキストは一定期間、翻訳AIの訓練にも使用されると書いてある。さらに、明確に「個人を特定できる情報の入ったテキストは翻訳してはいけない」としている。

一方有料版では、サービスを提供するのに技術的に必要な範囲でのみサーバーに保存し、永続的に保存されることはない。問題が起こった時のみ例外的に最大72時間保存されるが、データは暗号化して保存され、問題対処後は自動削除するとの旨が書かれている。

私はこのセキュリティーの部分が気になってすぐに有料版を契約した。やはり長い時間をかけて自分が書いたものが、自分の知らない場所に電子的に利用できる形で残るのは気持ちが悪かったからだ。

ちなみに、有料版の規約にはDeepLを使って翻訳したものについての著作権をDeepLは主張しない、とはっきり書いてある。まあ、そうでなければ使う人もあまりいないだろう。

しかし、いずれにせよ利用規約はきっとこれからも変わって行くし、ここに書いたことも概要であり、また不正確であることも考えられるので、使用する方はDeepLの利用規約を読んでからにしてください。

 

2.主な使い方

(1)翻訳欄

ウェブのDeepLのページを開くと左右に二つ大きな欄が現れ、左の欄に文字を入力すると右側に翻訳が出てくるというGoogle翻訳でもおなじみの形だ。

入力文を書き換えると、一定の速さで、翻訳も追いかけてくる。元言語と翻訳言語も選べる。いまは20種類以上の言語を扱えるようだ。

この右側の欄がなかなか素晴らしい。出てきた翻訳を変えたい時には変えたい場所の単語をクリックすると、ずらっと代替候補の単語がプルダウンで現れる。上に近いほど、DeepLとしておすすめの選択肢のようだ。文を切ったり一息入れるためのピリオドやコンマが選択肢に現れることもある。

ここで単語を選択するとその単語だけが変わる場合もあるが、多くの場合は選択した単語に合わせてそれ以降の表現も変わる。だから、文章の先頭の単語を変えることで、構文をがらっと変えてしまうこともできる。ちなみに、このプルダウン選択機能は右欄が日本語の時には使えない。(2022年6月に試したところ、右欄が日本語の場合もプルダウン選択機能が使えるようになっていました!)

翻訳をしていると最初に左に日本語を入れ、右に現れた英語翻訳欄でプルダウン機能を使って好みの英文にする。その後、その英文が本当に意図した日本語の意味を持つかどうか、左右を入れ替える。

この入れ替えもクリック一つでできる。つまり、右の英文が左に行き、その英文のDeepLとしての日本語訳が右側に現れる。その日本語がおかしい時は、さらに左側の英文をいじって、意図した日本語の意味やニュアンスになるまで試してみる。というのが私が最初にやった基本パターンだ。

(2)ファイル一括変換

左側の欄は、ペーストでもテキスト入力ができるし、決められた数種類の形式のファイルなら、ファイルをドラッグアンドドロップするだけで一括翻訳してくれる。

一括翻訳では、翻訳されたテキストは左側に入力したのと同じ形式のファイルで、翻訳文として右側に返ってくる。それをダウンロードするのだ。

私は有料版でしかこれをやったことがなかった。ワード文書を入力すればワードの翻訳文として普通に編集可能なワードファイルが返って来た。

さっき、ログアウトして無料版で同じことを試してみたら、この場合も確かにワードのファイルとして返ってくるのだが、返って来た文書はワードで編集ができない文書になっている。これが有料版と無料版の決定的な違いだった。

(3)用語集

2022.5.7追記:今日DeepLを見たら日本語←→英語の用語集の機能が搭載されていました!

つまり、ワープロソフトの単語登録みたいなもの、だと思う。しかし、残念なことにこの機能は日本語については使えないみたいだ。

だから、例えばオリジナルの日本語文ではカタカナで書いていた登場人物の名前が、英文翻訳ではいろんな綴りで現れたし(ラ行がRだったりLだったり)、逆に英文から和文への翻訳をすると、それらしい漢字を当てた名前が二、三種類現れた。これは最後までどうすることもできなかった。

(4)音声読上げ機能

前述のプルダウン機能は、翻訳を始めた初盤から中盤あたりで頻繁に使った。骨格となる構文を決めるような段階で積極的に使ったということだと思う。

対して終盤でよく使うことになったのは、この読上げ機能だ。自分の中で8割方翻訳ができたと思った段階から、できた英文を読む時のスムーズさやリズム、無駄に長いセンテンスになっていないか、などがかなり気になり始めたのだ。

そうなってから、この機能をよく使った。使ったといっても、ウェブ画面の左側の欄の読上げ機能だ。ここに英文をペーストして読み上げてもらった。試しに聞いてもらえばわかると思うが、これがかなり秀逸だ。

自分には少し速すぎて、日常会話的な綴りの短い単語(it, up, put, set, get, letみたいな単語)が連続する時にはとても聞き取れないのだが、綴りの長い単語が出てくる場面(得てしてちょっと小難しいことを説明する場面)ならば、目をつぶって聞いていてもなんとか聞き取れる。

そういう音声を聞いて長ったらしいセンテンスを切ったり、同じ単語の繰り返しを避けるべきところを見つけたりといったことに、この読上げ機能を使った。

よく聞いてみてください。文章の切れ目で次のセンテンスを喋り始める前に、息継ぎの音が入っている!これに気づいた時には感心した。たしかに人が読む時には息継ぎがとても大事だ。黙読する時にも文章の切れ目は意味をスムーズに捉える上で大事だろう。

そして何よりも、終盤には自分の目だけで文章を追いかけて意味を理解することに疲れてしまったというか、チェックのスピードアップをしたかったこともある。自分の意志で文章を読み進めるのは大変なので、読上げ機能に読んでもらって、半ば受動的に文章チェックをするというスタイルができあがったのだ。

(5)アプリケーション

パソコンにダウンロードするアプリケーションもある。ウェブと同じように左右の欄があるのだが、もちろんオンラインでないと機能しない。翻訳のメインの部分はウェブ版と同じようにDeepLのコンピューターでやるのだろう。

このアプリケーションは、翻訳そのものではない周辺処理を引き受けてサーバーの負担を軽減するためのものだと思う。なお、翻訳の精度はどちらも同じだと感じた。

スマホアプリもある。ただしこちらはプルダウン機能のようなものはついていない。

 

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