信用スコアをヒントにして書きました

最近話題になってきた信用スコア。

中国の信用スコアというのが、去年(2019)あたりからよくニュースで見られるようになりましたね。

どうやら、有名なところではアリババ・グループの芝麻信用(ジーマ信用)などが、グループが提供するサービスの利用者の信用度を点数にして、良い点数の保有者にはグループ関連のサービスに様々な特典を与える、といった仕組みから始まっているようです。

信用度を測るのには、学歴とか仕事とか、グループのサービスの利用度とかクレジットの返済の履歴とか、様々な要素をAIも使いながら分析して点数を弾き出していると言われています。

特典はお金を借りる時の金利が下がったり、提携先のホテルやレンタカーのデポジットが必要なくなったりと、いろいろあるようです。

アリババ・グループの他にも同様の信用スコアを提供する会社があって、国民の間にかなり普及してきたことから、こういったスコアが他のサービスや市民の生活にも影響してきているとのこと。

例えば、スコアが低いと交通機関の切符が取りにくくなるとか、逆にスコアが高いと外国に行く時のビザ申請が簡単になるとか、公的な仕組みにも使われるようになって来たみたいです。

さらに、中国の地方政府も信用スコアの仕組みを導入し始めているそう。中国は国をあげてこういう仕組みを推進しているみたいですね。

最初この話を知った時は、「世界はそんな段階に突入したのか!」とまさにディストピアを想像して驚いたのですが、少なくとも金融の世界では欧米や日本でも信用スコアというものが以前から存在しているそうです。最近電車の中でも、AIを使って点数付けして融資するという広告をよく見かけます。

でも、もしそういうスコアが生活や基本的な権利など他の側面まで影響するようになったら、いったいどうなるんだろうという疑問を持って書いたのが「得失点差の小さい男」という話。ここでは、「スコア」ではなく「ポイント」という言葉を使いました。

結末は特に考えずに書き始めたのですが、念頭には「こんな社会はいやだ」という結論になるだろうな、と思って書き始めました。話の設定はポイント制度の究極の形として、政府がこの制度全体を管理しているというものです。

嫌な社会になるだろうと思いながら書いていたんですが、実は書いてるうちに一見「これいけるじゃん。おもしろいんじゃないの?」という感覚になってきました。

確かに、こういう仕組みは社会を良い方向に誘導する手段として、ある程度は使えるような気はします。

だけど、よく考えれば、こういう仕組みが大手を振るって構築され始めると、特に公的な仕組みに広く導入されてしまうと、とても嫌悪すべき状況が出現するだろうというのが書いてみた感想です。

今までも、個人を評価するためのレッテルのようなものは存在していました。たとえば、本や記事に書かれる著者の略歴がそうだと思います。

でも、いま書かれている略歴は数字で表現されるものではなく、あくまでもその人が経験、あるいは成し遂げてきたことを、数字ではなく自己申告の言葉で表現したものです。

私はそういう略歴を見て「わーすごい。こんな経歴の人には何をやってもとてもかなわないや」と思うことが確かにあります。

でも、人によっては「そんなもの何の関係もない。自分は他の人が略歴欄に書くようなことは何もなくても、これまでの自分に誰にも負けない自信と誇りがある」と言い切れる人がいっぱいいますよね。

要は、物事を考える際の価値観には人それぞれの多様性があるということだと思います。

それがもし、点数として、数字だけの表現による単一の価値観として社会に共有されてしまったなら……というのがこの話を考える際に本質的に重要な事なのではないでしょうか。

略歴や人の行動を点数に換算するルールは、信用スコアの仕組みを管理する人が決めてしまうわけですからね。

簡単な例で言うと、受験勉強をしていた時の自分の偏差値とか、学校の偏差値ランキングの数字みたいなものですね。

実際長い間生きていると、そんな数字に関係なく活躍して幸せになっている人は普通にいっぱい見ています。

受験の偏差値は、今も昔も参考情報としてしか使われないのでまだいいんですが、もしそういう数値化された個人の評価にかかわる情報が、公的な仕組みに組み入れられてしまったらどうなるか。

公的な仕組みということはそこから逃れられないわけで、そうなるとかなり困ったことになるのではないかと思います。

最後に、この記事を書くにあたって色々検索していたら、信用スコアについて考察した論文を見つけましたので紹介しておきます。とても難しい内容ですが、時間をかけて読んでみたら、なるほどなぁと感心してしまいました。こちらです。

 


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