オウムアムアについて

オウムアムアのニュースをよく見たのは去年(2019)の始め頃だったかな? Yahoo!ニュースなんかにも時々出てたから、細長いオウムアムアの想像イラストとともに、ニュースを読んだ方も多いんじゃないかと思います。

でもニュースを読まなかった方のために、オウムアムアが何なのかとそれに対する世の中の反応を説明しておくと、だいたい下のようなものでした。

 二年前、二〇一七年の半ば頃、長さ数百メートルの細長い棒のような形の物体が太陽系に来ていた。
 この物体は猛スピードで太陽系にやって来た後、太陽のそばを通ってその引力で方向を変え、地球の近くを通ってから、太陽系の外に向かってまた飛び去って行った。つまりこの物体は太陽系に由来する天体ではなく、もっと遠くの宇宙からやってきたものなのだ。天文学者によると、太陽系外の物体の飛来が観測されたのはこれが人類史上初めてのことだという。そんな驚くべきものを最初に発見したハワイの天文学者たちは、この物体に「オウムアムア」という不思議な名前をつけた。ハワイの言葉で「初めての使者」とか「斥候」という意味らしい。
 この名前が拍車をかけたのか、世間ではこの物体が地球外の生命体が乗った宇宙船か探査機ではないか、という議論を活発に交わしている。一方、学者たちは初めて観測した太陽系外からの物体に驚きながらも、世の中の宇宙船説には惑わされずに冷静に分析を進めているそうだ。大半の天文学者は「これは小惑星か彗星に違いない。少し物理法則に合わない加速が観測されたが、きっと岩に付着していた氷が太陽の熱で蒸発して、そのガスが岩を加速させたんだろう」と推測していた。科学の世界では、奇妙な現象にもできるだけ既存の知識で説明をつけようとするのは普通のことで、今回の物体についてもそれで決着がつきそうだった。
 しかし、この物体を自然のものだと決めつけるのは適切ではない、と主張している科学者たちもわずかながらいる。

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 S教授もその中の一人だ。

これは前に紹介した短編集に入れてある、「オウムアムアむ」という小説の冒頭の部分です。もちろん、この小説は全てフィクションですが、冒頭の部分には説明のために上のような文章を入れました。

この部分だけは、フィクションではなくほぼ事実に近いことを書いたつもりです。「S教授もその中の一人だ」からが完全なフィクションです。

もともと宇宙の話は好きなので、このオウムアムアのニュースには結構興奮していました。特に、太陽から離れる時に加速をしたという話には、なんとかもっと詳しく調べられないのかなと思っていました。(「加速した」というのは、太陽から離れる時の減速の度合いが計算した値より緩やかだった、という意味だと思います)

そもそも、人類が初めて観測した太陽系外からの物体であって、細長い形をしていて、加速している、とこんなに珍しいことが重なることは考えにくいので、多くの人が「何かあるかもしれない」と考えたくなるのも無理もないことだと思います。

私もその一人ですが、この小説を書いている最中に特に奇妙に感じ始めたのが、加速の件もさることながら、「細長い」ということ。幅と長さの比は1対10ほどもあると推測されているそうです。

そんな細長いもの自然界で見たことあります?

もちろん、生物ならば、木やヘビやミミズなどいくらでもいますけれど、非生物では割と珍しいんじゃないかと思います。

自然界の細長い物って何があるだろうと、ずっと考えていて思いついたのは、断崖絶壁なんかで見る柱状節理の岩、顕微鏡で見た雪の結晶、鉱物の結晶、鍾乳石、つらら、それから岩山が水とか風で侵食されてその一部が柱状に残ったもの。

オウムアムアが自然のものだとすると、最後のものが一番それらしいけど、地球ではなかなか見る機会はありませんよね。しかも数百メートル級のものだとかなり珍しいんじゃないでしょうか。もちろん、地球の表面では宇宙空間とは違って風化が激しくて岩はだんだん崩れて砂や土になっていくから、なかなか見つからないという理由もありますが。

真実が何なのかは今になっては誰にもわかりませんが、初めて見つけた太陽系外からの物体が、地球ではあまり見慣れない形のものだった、しかも妙な加速をした、というのはやはりエキサイティングな話だと思います。

というわけで、「オウムアムアむ」という話は「この物体を自然のものだと決めつけるのは適切ではない」という立場のSFとして書きました。そのほうが世界が楽しくなるような気がしますしね。

実は上に書いた冒頭の文章のあとは、例によってとてもくだらないオヤジギャグに突入するのですが、そのあと立ち直ってちゃんとSF風になります。そのふざけた話も物語の中での役割を果たしているんですよ。

それから、終盤の方に書いたS教授のセリフも自分では気に入っています。一流の人が持つ矜持とはこういうものなんじゃないかと思って。

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