マレーシアの言語事情が生んだマングリッシュ・ソング

マングリッシュとは、マレーシア英語のこと。MalaysiaとEnglishを合わせた造語です。


マレーシアの民族構成は、
マレー系(少数民族含む)67%、中華系25%、インド系7%

大きくマレー系、中華系、インド系の3民族がいるマレーシアでは、家庭では各々の民族の言葉を使い、学校では公用語であるマレー語、それからマレー語とともに民族間のコミュニケーションに広く使われている英語を学びます。

というわけなので、最低でも、マレー系住民は2つ、中華系・インド系住民は3つの言葉を使うようになります。

もちろん個人によって得手不得手があるので、だれでもペラペラと英語を話せるというわけでもありませんが。

小さいときからこの多言語環境で育っているので、マレーシア人の言語感覚はとても優れていると思います。英語の能力はアジアの中でトップクラスとか。

 

で、この環境で生まれたのがマングリッシュという言葉。

言語感覚が優れていると言っても、普通の人が日常で交わす会話での英語の文法などはかなりいい加減です。

それに、英語で話しているはずなのに、時々マレー語の単語が入ったり、中国語からきた言い回しが入ったり。さらには文法もマレー語と英語が混ざっていることもあります。

マレーシア人が自分たちが話す英語について、こういうテキトーな文法や言語のちゃんぽん状態をやや自嘲気味な意味を込めて呼ぶときにマングリッシュと言っています。

しかし、マングリッシュをあなどってはいけません。しっかりと通じています。彼らの間では。

小さいときから多民族、多言語環境で育ったマレーシア人は、会話の際に文法の正確さなどより、なによりもコミュニケーションをとることを重視してきたので、こういう話し方になってきたんだと思います。

 

こういう背景があるので、マレーシアは英会話を始めたい日本人におすすめだとよく言われます。

たしかに、実質的なコミュニケーションを重視する彼らは、こちらがどれだけ下手な英語で詰まりながら話していても、真剣な顔をして意味を汲み取ろうとしてくれます。

それで、意味がわかってもわからなくても、とりあえず何らかの反応を返してくれます。

きっと彼らも言葉のことでは子供の頃から色々苦労してきたので、そういう思いやりがあるんでしょうね。

 

こんなマングリッシュをわざと強調した歌詞の”Kantoi”という名前の歌があります。

Zee Aviという女性シンガーの曲で、もう10年ぐらい前の歌ですが、マングリッシュの意味がよくわからなくても、ウクレレの素朴な伴奏でなかなかいい感じの曲です。

若い女性が恋人の浮気のウソを見破ったが、結局彼女もその男性の友達とデキてしまっていた(?)、、、という、マレーシアの現代の若者を描いた歌です。

Googleで”kantoi”で検索すると一発ででます。字幕つき。iTunesでも歌詞付きで売ってました。

アダムの選択(亜東 林)

 

手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

シライン(亜東 林)

 

LIARS IN SPACE (Rin Ato):シライン英訳版

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マレーシアの交通事故死者数はかなり多いーうち2輪車関係が6割超

マレーシアでも年明けに交通事故の統計が発表されます。もうすぐ2018年の統計が発表されますが、昨年(2017年)の交通事故死者数は6,740人とのこと。同じ年の日本の交通事故死者(30日以内死者)は4,431人。

マレーシアの人口が約3,000万人、日本の人口が約1億2,000万人であることを考えると、単位人口あたり日本の約6倍の死者数になります。

人口当たりの交通事故死者数は、東南アジアではタイが最悪のようですが、マレーシアはずっと2番手あたりの位置を占めています。

統計の取り方が違うので単純比較はできませんが、この数字は日本で言うと交通戦争と言われた1970年頃と同じか、さらに悪い状況です。私も2年半マレーシアにいて、交通事故の現場や炎上する車を見たことが何度かありました。

交通事故の死者はどうやら、都市部より地方の方が多いようです。地方では都市部よりスピードが出ていたり、救急体制が整っていなかったり、照明など道路の整備ができていなかったりと色んな理由が考えられます。道路のカーブや交差点よりも、直線路での事故死が多いという調査結果も見たことがあります。

また、マレーシアの2017年の交通事故死者6,740人のうち、4,348人が2輪車関係の死者(運転手や同乗者)とのこと。6割以上にのぼります。

マレーシアで車を運転したことがある人は、脇をすり抜けてゆく2輪車にヒヤッとしたことがあるのではないでしょうか。

私は車を運転をする時できるだけ車線変更はしないようにしていますが、車線変更が必要なときは後ろから2輪車が迫って来ていないか、かなり注意しているつもりです。しかし、それでも予想外のハイスピードで2輪車が突然左右に現れて驚かされることがあります。


こういうタイプの2輪車が100km/h以上のスピードで直線であろうが、カーブであろうがお構いなしに追い抜いていく

たぶん彼らは車を運転したことがないんじゃないかと思います。車にどれだけ死角があるか知っていれば、あんな無謀なことはできないでしょう。

マレーシア人の車(4輪車)の運転は荒いという人もいますが、私は少なくとも都市やその周辺ではむしろ穏やかなんじゃないかと感じています。

その理由のひとつがこの2輪車の無謀運転。車は穏やかに運転しないとあちこちで2輪車を引っ掛けて事故を起こしかねないからではないかと思います。

二輪車の運転手は、そんなおとなしい車をいいことに好き放題に走っているように見えます。

車を運転しないと行動の自由がかなり狭まるマレーシア。被害者にも加害者にもならないように気をつけたいものです。

アダムの選択(亜東 林)

 

手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

シライン(亜東 林)

 

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マレーシアでよく使われる略語

どこの国でも略語を使いますが、マレーシアはかなり頻繁に使うほうなんじゃないかと思います。


<地名>

マレーシア人も外国人も日常的に使うのが”KL”(ケー・エル)。クアラルンプール(Kuala Lumpur)のことです。

外国人としては最初は略語で言うのが恥ずかしかったりしますが、日本人でもマレーシアに住み始めた人はすぐ”KL”を使い始めるんじゃないかと思います。

日本人的には会話の中で”クアラルンプール”と言うのは、発音がやや面倒くさいですよね。KLに慣れるとなかなか戻れなくなります。

でも、マレーシア人はKuala Lumpurとフルに発音するケースが意外にあるように思います。

少し抑揚をつけると発音しやすくなるのと、フルでいうときのマレーシア人は、この街に誇りを持っているというニュアンスを込めているような気がします。

地名といえば、KL周辺の人は”PJ”(ピー・ジェイ)もよく使います。ペタリン・ジャヤです。KL市を取り囲むセランゴール州の市ですが、とても発展しているところ。

マレーシア人と会話していて”Petaling Jaya”とフルにいう人はほとんど聞いたことがありません。

Kuala Lumpurとは違って、こちらの場合はニックネーム的な”PJ”と親しみを込めて呼ぶ方が、ちょっと誇らしげなイメージを出していると感じます。

他には、”KK”=コタキナバル、”JB”=ジョホールバルなどの地名の略語がありますが、KLにいるとこの地名が会話に出る頻度は少ないので、私はあまり使いません。マレーシア人と会話していて、はっきりと誤解が起きないときに使う程度です。

<空港、マレーシア航空>

旅行者をはじめ、マレーシアへ来る外国人の多くが最初に使うクアラルンプール国際空港は”KLIA”。すっかりこの呼び方で定着していますね。

例えばタクシーでKLIAへ行く時も、単に”エアポート”とか”インターナショナル・エアポート”と言ってしまうと、近くにあるスバン空港(正式にはSultan Abdul Aziz Shah Airport)と区別がつかなくなってしまうので、KLIA(あるいはLCC用のKLIA2)と言う必要があります。スバン空港は国内線の一部とシンガポール線の一部で使われています。

マレーシア航空の以前の会社名はMalaysia Airline Systemだったので、20年前に住んでいた時の記憶から私は”MAS“(マス)と今でも言ってしまいます。

<政治、政治家>

新聞とかデジタルニュースを見ていると、政治関係の略語がいっぱい使われます。”PM”はPerdana Menteri(マレー語)またはPrime Ministerの略で首相の意味、”DPM”はDeputy Prime Ministerで副首相のことです。

MP”は国会議員(Member of Parliament)。このあたりは英語圏で使われる用語みたいです。

ほかに、”MB”というのがありますが、これは州首相(Menteri Besar(マレー語))。ただし、王様のいない州の州首相には別の名称があります。ああややこしい。

個人にも略称が使われることがあります。よく見るのは”Dr M”。マハティールさんのことですね。

5月の選挙で野党所属になってしまった政治家Khairy Jamaluddin氏は親しみを込めて”KJ”と書かれているのをよく見ます。

政党名は略称のオンパレードですね。

与党連合の”PH”(Pakatan Harapan(マレー語))を構成するのがPKR、DAP、PPBM(Bersatu)、Amanah(これは略語じゃないみたい)など。

野党連合”BN”(Barisan Nasional(マレー語))を構成するのがUMNO、MIC、MCA。

他にPASなどの政党もあります。

<その他>

BM”って何?車のこと?と今でもときどき戸惑いますが、Bahasa Malaysiaでマレー語というかマレーシア語のこと。

KLに住む人なら”DBKL”はすぐに覚えると思いますが、Dewan Bandaraya KL(マレー語)でKL市役所のことです。”DBKK“ならコタキナバル市役所です。

LRT”と”MRT”は両方とも都市やその近郊の鉄道のこと。LRTの方が輸送量が小さくて軽量です。マレーシアに限らず他でも使う用語です。

JPJ”はJabatan Pengangkutan Jalan(マレー語)で、マレーシアで車に乗る人は必ず関係する日本でいうと陸運局みたいな役所です。

KTM“(”KTMB”)はKeretapi Tanah Melayu (Berhad)でマレー鉄道(会社)。KTMが走らせる長距離の都市間電車が”ETS”でElectric Train Service。同じくKTMが走らせるKL近郊など近距離の電車はKomuter(通勤線)と呼ばれています。

会社名の後につく”SDN BHD”(スンディリアン・ブルハド)は非公開会社、”BHD”は公開会社という意味らしいです。BHDのみがつく会社の規模はふつう大きいです。

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